契約などの法律行為を行うには意思能力がなければなりません。
相続財産を分ける遺産分割協議も、当然意思能力がなければ有効に成立させることができません。
相続人の中に寝たきり・認知症等により意思能力がない方がいる場合はどうすれば良いのでしょうか。
この場合、成年後見制度を利用して、家庭裁判所に成年後見人を選任してもらい遺産分割協議を行うことが可能です。
後見人の職務は本人に代わって法律行為を行う事であり、遺産分割協議も含まれます。
後見人は本人の財産維持に努めますので、原則として本人の相続分を下回る遺産分割協議には応じられません。
ここでいう相続分は、法定相続分を基本として考えます。例えば、父が亡くなり、相続人が母と子2名の場合、母(相続人の配偶者)の法定相続分は2分の1ですので、母に後見人が選任されていると、相続財産が1億円の場合では5000万円分の相続分を確保する必要があります。
なお、遺産分割協議で後見人を選任するときにはいくつか留意が必要です。
留意点
(1) 相続人が後見人となる場合
上記の例で母の後見人に子が選ばれた場合、遺産分割協議にあたっては子である後見人母の利害が反することになるので、別に特別代理人又は新たな後見人を選任してもらう必要が生じます。
(2) 後見人選任までの期間
相続財産が多額で相続税の支払いが生じる場合、相続税の納付期限は相続の開始があったことを知ったとき(通常亡くなった時)から10か月以内に申告・納付をしなければなりません。後見人選任まで、どんなに早くても2か月、通常3~半年はかかります。相続税納付が予想される場合には早めに後見人選任の手続きに着手する必要があるでしょう。
(3) 具体的な相続分
相続財産には現預金以外も含まれること一般的で、法定相続分に応じてきっちり割り切れる数字となることは稀です。不動産など評価が分かれるものも含まれます。どの程度が許容範囲かは判断が分かれるところです。
このように、後見人を選任すれば万事解決とはいかず、予想しない問題が生じることも少なくありません。
当事務所では豊富な後見人就任の経験を活かした実務的なアドバイスが可能です。お気軽にご相談ください。