令和3年2月10日、法務大臣の諮問機関である法制審議会は、相続や住所変更時の登記を義務化することなどを内容とする法改正を上川陽子法相に答申しました。
違反すれば過料が課される罰則付きです。今国会成立予定だということです(日本経済新聞「土地登記は相続3年内に、違反なら過料 法制審答申」)。
現在、不動産登記の申請は、表題部(不動産の外形の登記)を除いて変更手続きを行う義務はありません。法務局に記録されている所有者に変更があっても、「何週間以内に手続きせよ」との規定はないのです。権利の登記により利益を受けるのは名義人自身であること等が理由です。
しかし、上記の記事にもあるとおり、長期間、相続登記・住所の変更登記がされないことによって、公共事業や民間の開発事業の遂行に支障をきたしています。
今までも、長期間相続登記をしないでいることによって、所有者(相続人)に不利益になることが多々ありました。
相続登記の申請には、原則、相続人全員の印鑑が必要になります。相続人が亡くなると、さらにその相続人全員の印鑑が必要です。登記しない間に相続が重なり、印鑑が必要な相続人が100名を超えるようなケースも見受けられます。これだけの人数になると、土地を処分しようとしても採算が合わず、結局、さらに放置されてしまいます。
固定資産税を納めているから大丈夫と思っておられる方も多いようですが、注意が必要です。市町村役場から固定資産税の納付書が届いたからといって、登記記上の所有者とは限らないからです。
平成28年時点、所有者不明土地は全国で410万ヘクタールに上り、九州本島の面積を上回っています。
40年までには北海道本島に匹敵する720万ヘクタールに広がるとの試算もあります。
いわば、これだけの土地が有効利用されずに放置されているか、権利関係が不安定なまま利用されているということです。
トラブルになる前に、また、法制化される前に早めの相続登記の手続きを行うことが肝要です。