土地・建物の所有者が知れず、空き家問題等が問題となる中、これらの問題に対処するため、所有者が不明な場合の土地・建物についての「所有者不明土地・建物管理制度」が民法に定められました。
施行は令和5年4月1日です。
土地・建物の所有者が不明の場合、その土地を売却したり、老朽化した建物を取り壊す際に、所在不明となっている所有者の意思を確認することができないという問題があります。これまでは、民法25条以下に定められている不在者財産管理制度が利用されてきました。不在者財産管理制度では、行方が知れない所有者の代わりとなる不在者財産管理人を家庭裁判所が選任し、その管理人が所有者に代わり意思表示を行うことになります。
しかし、不在者財産管理制度では、管理人が不在者の財産全般について管理することになったことから、管理期間が長期化する、予納金が高額になる場合がある等の問題もありました。
新たに定められた所有者不明土地・建物管理制度は、
②管理命令を発する必要があると認めるときであること、
③利害関係人の請求があることの3つを満たした場合に、
特定の土地・建物のみに特化して管理を行う管理人が選任される制度です(民法264条の2)。
管理人による管理の対象となる財産は、所有者不明土地(建物)のほか、土地(建物)にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(売却代金等)、建物の場合はその敷地利用権(借地権等)にも及びますが、その他の財産には及びません(民法264の2Ⅱ、264の8Ⅱ)。
土所有者不明土地・建物以外の他の財産の調査・管理は不要であり、管理期間も短縮化する結果、予納金の負担も軽減する、複数の共有者が不明となっているときは、不明共有持分の総体について一人の管理人を選任することが可能になる等、土地・建物の効率的かつ適切な管理の実現が図られます。