1 所有者不明土地問題
所有者不明土地とは、①不動産登記記録により所有者が直ちに判明しない土地、②所有者が判明してもその所在が不明で連絡がつかない土地のことをいいます。登記記録上の住所に所有者が住んでいないケースが典型です。
令和2年の国交省調査によると、全国のうち所有者不明土地が占める割合は24%に及び、これは九州本島の大きさに匹敵するものです。また、所有者不明土地が生じている原因の63%が相続登記の未了、33%が住所等変更登記の未了となっています。今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等によりますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされています。
所有者不明土地がそのまま放置されると、所有者の探索に時間と費用が掛かり公共、民間事業問わず、用地買収が妨げられることになります。土地だけではなく、建物についても同様です。
なお、私たち司法書士等いわゆる士業は、職務上必要がある時は登記記録に記載された所有者の住所を手掛かりに住民票を追って現住所を調べることは可能ですが、これはあくまで訴訟の委任を受けた等、職務で必要になるときに限られ、単に不動産所有者の探索のために現住所を調べることはできません。
2 申請義務化
今までは不動産登記は権利だと考えられ義務ではなかったので、相続が発生したものの使う予定がないなどの理由で放置される不動産が少なくなかったのが実情です。しかし、相続登記をしないでいるとどうなるか。遺産分割協議を行うには、名義人である被相続人の相続人全員の協力が必要になります。遺産分割をしないまま相続が繰り返されると、土地共有者はねずみ算式に増加していきます。時間が経つほど相続人間の調整が難しくなり、土地の利用が難しくなっていくのです。
そこで、法改正により、令和6年4月1日から、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務化されます。正当な理由のない申請漏れには10万円以下の過料の罰則もあります。遺産分割が難しい場合には、相続人申告登記を行い過料を免れる方法もあります。この改正は令和6年4月1日以前に生じた相続にも適用されます。
3 その他の改正
所有者不明土地解消、空き家対策に関する法改正は相続登記義務化だけではありません。その他、住所変更登記申請の義務化(施行年月日未定)、財産管理制度の見直し等不動産の利用円滑化に関する民法改正(令和5年4月1日施行)、相続土地国庫帰属制度の創設(令和5年4月27日施行)など、専門知識が必要になった時は是非司法書士にご相談ください。